ミュージカル「正岡子規」観劇記

 四国松山は正岡子規の出身地であり子規堂、子規博物館があります。そのどちらへも私は数回足を運びました。子規堂には彼が使用したノートも展示してあって、その中に数学の三平方の定理の証明が筆で書かれているページがあるのを見つけました。俳句やら、短歌、それから病床で書いたらしい絵もありますが、私にはその数学のノートに一番リアリティーを感じました。明治人の学問に対する真摯な向き合い、憧れのようなものを感じたからです。もちろん彼は明治のこの地ではエリート、特別な人であったのでしょうが。

松山の隣の東温市の商業施設に『坊ちゃん劇場』(夏目漱石の小説 坊ちゃん にちなんで命名されています)があります。そこで今年は「正岡子規」(ジェームス三木さんが脚本・作詞・演出されています)というミュージカルが上演されています。先日、観劇しました。生でミュージカルを観劇するのは初めてでしたが、楽しめました。

司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』等の小説や、秋山兄弟について書かれた書籍(書名は忘れました。文庫で出ています。)等で文字から「正岡子規」についての知識はありました。(大河ドラマ 坂の上の雲 は見ていないのです。)ミュージカルの俳優さんたちの ひたむき な語り、歌、踊りを見ているうちに、その知識に生命感が吹き込まれてきます。

いつの間にか、子規とその周囲の人との交流を模擬体験していました。物語の楽しみはその作中の人物等になって仮想体験することですが、文字で表現された物語以上に、リアリティ・を感じることができました。観劇者は普段の日常から離れて、異空間にすまい、感動して、そして終了以後癒されていることを知ります。

子規は文学革新運動を通じて、同時代に生きる人々の心に火をつけようとしました。その生きざま、戦いが 死神の登場 により激しくかつユーモラスに演じられていきます。また人口に膾炙した多くの俳句、短歌がうたわれ、見る人(見て聞く人)の、それらの作品を読み、知りえた時の、個人的な感動が呼び覚まされます。さまざまな仕掛けが異空間での体験を味あわせてくれるのです。

上演終了時の俳優さんたちの退場時には拍手が沸き起こり、続きます。私も、劇場の出口で見送ってくれる出演者の一人ひとりに握手して、「感動しました。ありがとう。」とお伝えしました。

One thought on “ミュージカル「正岡子規」観劇記”

  1. キヨシです。
    非日常に身を置くことで、日常がよく見えたり、
    考え方が変わったり、心が豊かになったりしますね。
    コンサートや演劇。
    久しぶりに行きたくなりました。

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