「愛する」について その2

 超介です。

 小川糸著「食堂かたつむり」という小説があります。初版が2008年1月です。良く売れた本だと思います。小説はあまり読まないのですが、いろいろな料理が登場するので、それに惹かれて読んでしまいました。null

 「ほたる」(主人公の女性に名前)は、アルバイトから帰ってきて部屋の荷物が恋人によって持ち去られていました。突然、愛が喪失したのです。この場面は淡々とかかれていますが、「声を失うほどのショック」の通り、彼女は声が出なくなります。

 祖母から受け継いだ糠床だけがのこされ、そのつぼだけを持って、故郷に帰ります。山奥の村で、「食堂かたつむり」をひらきます。1日1組までのレストランです。食事を予約する人は、事前にカウンセリングを受け、彼女はそのお客のためのレシピを考えるのです。

 主人公はさまざまな事情を抱えた人が生きていく力、関係を修復するきっかけとなるための料理を作ります。大切な人々のために料理を通じて祈ります。食堂つくり、道具そろえ、食材、レシピ作成等がお客のために準備されます。

 大切な人たちのために料理のレシピを考えて、食材を大切に扱い、その声を聴きながら調理して食卓に出していくさまは、愛するという行為です。各場面で作られる料理をお客が食し、変化を遂げるさまにどきどきします。それを読み進むにつれて、「ああこんな風に日々の生活を大切にしたいな」と思わせます。

 愛を喪失した主人公が料理を通して愛することを再構築していく物語です。大切な人を亡くしたり、失恋したり、離婚したりして愛をなくし、呆然自失することも人生にはあります。でもこの物語を読めば、愛することは思考と行動であり、それによって愛を再構築することができる、そのように考えさせてくれる物語です。(アマゾンの書評では評価は2分されているようです。私は高評価です。)

2 thoughts on “「愛する」について その2”

  1. りんです。
    食べることって、それだけで、幸せですよね:heart:t
    誰かの為に、作ることもまた、幸せですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です