教育コーチの徒然なる読書日記12

教育コーチのGです。

 第12回徒然読書日記は『働くひとのためのキャリア・デザイン(著者:金井壽宏 PHP新書)』です。

 金井壽宏さんは、神戸大学大学院で経営学を専門にしている教授です。もちろん、純然たる経営学に関する著書もある(私は1冊読んだだけ)のですが、かなり専門的で難しく、経営学に対する知識が全くない私にはちんぷんかんぷんでした。

 ところが、ひとたび金井先生が経営学を人間的側面から論じると、今回ご紹介する本のように大変読みやすく、しかも「なるほど」「そうだったのか」「そうそう」などと思わず相槌を入れながら読み進めてしまう面白さがにじみ出てきます。

 5,6年前でしょうか、金井先生の講演をお聞きしたとき、その内容の充実度合い、知的好奇心をくすぐるトピック、そしてその話術に、改めて惚れこんだのを思い出します。

 さて、今回ご紹介する本のまえがきに、キャリアについて次のように記されています。

【キャリアとは、簡単にいうと長期的な仕事生活のあり方に対して見出す意味付けやパターンのことを言います。】

 おいおい、簡単にって書いてあるけど、意味が全くわかりません。

 でも大丈夫、この本を読み進めていくと、キャリアとは何か、キャリアというものに対してどのように考えどのように接していけばいいのかが、驚くほどすんなりと沁み込んできます。

 さて、金井さんはキャリアに関して、ザクッと次のような向き合い方を提示しています。

【「せめて節目だと感じるときだけは、キャリアの問題を真剣に考えてデザインするようにしたい」というものだ。】
【節目さえしっかりデザインすれば、あとは流されるのも、可能性の幅をかえって広げてくれるので、OKだろう。】

 そして、この節目を「トランジション」というキャリア論における専門用語や、「クロスロード」という言葉で表しています。

 あれ、どっちも曲の題名で聞いたことがあるような、と思われた方。そう、その通りです。金井さんもジョン・コルトレーンとロバート・ジョンソン(私はエリック・クラプトンのカバーでしか知りませんが)を紹介しつつ、節目論を展開していきます。このあたりの話の展開にも、くすぐられるんですよね。

 人生の節目(トランジション)では、しっかりとキャリアをデザインし、それ以外の時期には流れに身を任す(ドリフト)のもいい。そして、後知恵でもいいから、自分自身のキャリアを振り返り、デザインを再構成する。

【轍(わだち)は、振り返らないと見えてこないものなのだ。】

 そして、

【一見、開始の問題にみえるものは、実は、終焉(英語で、letting it goという絶妙な表現がこれに当たる)をきちんとできていないという問題であることが多い。】

 ときます。

 この一文などは、「う・ん、なるほど。あの場面も、あの時のやるせなさも、letting it goの問題やったんや」と私の脳がすこーんと透き通っていくのを感じました。

【これをくぐらなかったひとに限って、過ぎてしまった過去を振り返ってしまう。】

 教育コーチングにおける「自分を許す」とは、「過去を過去においてくる」こと。まさに、このletting it goを究極まで突き詰めたものといえます。

 さて、ここまでで、ページ数にしてこの本の内容の約1/4をご紹介しました。もちろん、一つ一つの事項はもっともっと内容が濃いですが。

 そして、長くなってきたので、続きは次回ということで。 

One thought on “教育コーチの徒然なる読書日記12”

  1. キヨシです。
    節目ですね。なるほど・・・。
    その時、その時も大切なのでしょうが、
    ここぞと言うときに、自分を見つめ直したり、
    振り返りをしたり、きちんとOKを出したり
    することが大切なんですよね。

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