教育コーチングとはAbout Educational Coaching

引き出す教育、それが教育コーチング

教育コーチングは、コミュニケーションを通して人が本来持っている意欲と能力を引き出し、目標達成と、その先にある「個」(※)としての自立を支援する教育メソッドです。 クライアント(相手。多くの場合青少年)を「持たない者・できない者」として見て「与える・させる」のではなく、「持っている者・できる者」と見て関わり、「引き出す」のです。「education」の徹底実践であるとも言えます。 ※個:何かを足さなくても誰かが傍に居なくても、一人の人間として、掛け替えの無い一人格として存在している状態
educationの本質を突き詰めると教育コーチングになる
「education」は一般的に「教育」と訳されますが、語源は「educe=引き出す」です。 福沢諭吉は次のように述べています。 学校は人に物を教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。教育の文字はなはだ穏当ならず、よろしくこれを発育と称すべきなり。かくの如く学校の本旨はいわゆる教育にあらずして、能力の発育にあり… まるで現代の教育に向けたメッセージのようです。日本の教育は明治以降、改革・改善を繰り返してきましたが、本質的には「教」中心のままで変わっておらず、いまだ「educe」には至っていないということです。 生徒「○○高校に行ければいいかなと思います…」 教師「そうか。じゃ、数学をまず偏差値55まで持って行こう。この教材を3回繰り返せ。これができないようじゃ合格は無理だ。終わったら次の指示を出すから」 これは「educe」ではありません。 知識・技術を「習得させ」、旧来の知識偏重型試験に「合格させる」には効果的かもしれませんが、新しい時代を生きるために必要な資質・能力は育まれません。 では「educe」実現のためにはどうすればいいのでしょう。突き詰めてたどりつく教育者のあり方・考え方・やり方を体系化したものが教育コーチングです。 生徒「○○高校に行ければいいかなと思います…」 教師「そうか。○○高校の何が魅力?」「どんな未来を創り出したいの?」「合格には何が必要だと思う?」「何に取り組みたい?」「邪魔する物があるとしたら何?」「それをどう解決していく?」「信じて、応援してるよ」 これが「educe」。 「考えさせる」のでも「話させる」のでもありません。心の深い部分、無意識の領域にあるものを「引き出す」のです。「育」中心の教育です。
4つのトライアングル
教育コーチングの基本的な考え方を簡潔にまとめた図が「4つのトライアングル」です。すべての教育コーチがしっかりと理解し、コーチングの根底に置く必要があるもの、いわば、教育コーチングのバックボーン(背骨)です。 成果のトライアングルは、教育コーチングの成果がクライアントの「『個』としての自立」であることを示しています。自立とは、依存・他責しない状態ですが、教育コーチングはそこに3つの要素を添えています。「より以上を目指し続けること」、「人の役に立つ存在であること」、「不完全性の自覚からにじみ出る謙虚さを持っていること」、この3つの要素を満たした状態を「『個』として自立」した状態であるととらえます。 その成果は、「傾聴」「質問」「承認」を柱としたコミュニケーションを行うことによって実現します。これが姿勢のトライアングルです。 この姿勢を創り出しているのが信念のトライアングルです。「人は育とうとする生き物だ」「人は自分の中に答えを持っている」「人はそれぞれ」、そう信じて関われば、クライアントはそういう存在として現れてきます。 この信念を支えるものがあり方のトライアングルです。教育コーチは「愛情」「信頼」「尊重」の人である、ということです。あり方とは人生目的、自分の存在意義、Being。すべての土台です。
これからの教育
偏差値重視の教育価値観、知識偏重の入試制度、学歴・学校歴重視の就職事情、そしてそれを背景に続けられるTeaching型の教育・・・。諸外国から「ガラパゴス」と称されることすらあった日本の教育は、いよいよ大改革の時を迎えました。 2014年11月20日の文部科学省の中央教育審議会への初等中等教育課程諮問、同12月22日の高大接続答申等によって示された方向性は、まさに「educe」への回帰です。 青少年が生きていく社会(知識基盤社会、グローバル社会、成熟社会、少子高齢化社会)を見据え、日本の国家を維持するために、そして一人ひとりの子どもたちの夢実現や幸福のために、何としてもやりとげる必要のある改革です。その方向性は、OECDのキー・コンピテンシー・国際バカロレア・ESD(持続可能な開発のための教育)等に照らしても間違いのないものです。 その改革の一つの核が「アクティブラーニング」。授業が講義型からアクティブラーニング型にシフトしていきます。 そのシフトは、単なる授業形式の変容にとどまるのか、新しい時代を生きるために必要な知識・技能や非認知スキル(試験で測定することが難しい資質能力)を育む授業へと質的転換するのか。そのカギとなるのが教育コーチングです。教育コーチングは、マンツーマンのみで行うものではありません。1対多、多対多で活用できるものであり、授業の中でフル活用することによって、児童・生徒の主体性・リーダーシップ、創造力、イノベーションの力、豊かな感性、コミュニケーション力といった能力資質を育む力を持っているのです。
なぜ、教育コーチングか
なぜ教育コーチングは、あらゆる教育現場で卓越した成果を生み出し、教育者に支持され続けているのでしょう。 一言でいえば、「人間操縦テクニック」「会話術」ではなく、人間とはどのような生き物か、コミュニケーションとは何かという理論や哲学に基づいて行う「人が育つコミュニケーション」だからです。 以下にて、基本的な考え方の一部を紹介します。
  • 人は育とうとする生き物である。育ちが発現しないのは「邪魔するもの」があるからである。
  • 人の心は二層構造をしており広大な下の層(無意識層)にあるものが行動や人生に多大な影響を与えている。
  • 人は4つの見方・きき方を持っており、多くの場合そのうちのいずれかに偏ったインプットをしている。
  • 人生は環境や出来事によって創られるのではなく、Belief(信じ込み)によって創られる。
  • 人の感情は、自分自身でコントロールできる。
  • 人のエネルギーの使い道(モード)は、大きく「成長」と「武装」の2つである。
  • 人は「被」の認識の中で生きていることが多い。「執」の認識にシフトすることで環境や人間関係は変えられる。
  • 人が目指す成果・達成・幸福のカギはコミュニケーションであり、コミュニケ―ションの起点は自分である。
  • 人間関係に不可欠な信頼の構成要素は6つあり、そのうち自分でコントロール可能なものは3つである。
  • 人の発展のためには自分自身をありのまま見て知ること、つまり観察することが必要である。
  • 人が自己実現を目指した行動を起こすためには、愛情・承認が必要である。
  • 人は目標達成のために行動しがちだが、目的を認識し、そこから行動を創り出すと驚異的な強さが生まれる。
  • 人は思考することを重視しているが、実は真にパワフルな行動は根源的欲求とリンクした感情・感覚から起こる。
  • 人は、他者が認識した通りの存在として現れる。
  • 人が知識・技術を習得し成長する過程は4段階に分かれる。それぞれに応じた「教」と「育」のバランスがある。