おとうさん・おかあさんへ

実家を離れて19年
今では子どものいる家族を持つ身

突然実父が末期癌の宣告を受けた。

限りある命を前に娘としておとうさんに
できるだけのことをしたい・・・そんな思いが募る日々

取り立てて仲のよい両親ではなかったが
ある日母が私にこう言った。

「ほんならお母さん帰ろうか!?」
ってお父さん、私が病院から帰ろうとしたとき
言わはったら泣けてきそうになったわ・・・
家に帰らせてあげられたらなあ・・・と思うけど×××・・・・

東京に住んでいる兄にこのことをメールした。

すると・・・

子どもには絶対に見えない、見る必要のない
夫婦の領域がある。すでにおとうさんは
その領域の人としておかあさんに会ってるんやと思う。

おかあさんどうしたはる?今日は来ないのかな?
といつも聞いてくるのも

一対で重ねた時間の中で
自分が一人前ではない人間で生きてきた
ことの確認なんと違うかな。

子どもや孫に囲まれてとはまた違う
一対で初めて一人前として歩みをはじめた
50年間の足跡を死期を前にして
確認したいんやと俺は思うよ。

どんなにギクシャクしていても
趣味があわなくても
タイプじゃなくても

50年一人前で生きられたのは
片割れがいて二人で一人前であったゆえ
の事なんやろう。

それが色恋ではなく
連れ添った夫婦の縁やないかなあ。

おかあさんの可哀そうやという感情は
確実におとうさんに伝わってるはずやし
それこそが以心伝心やないかな。

またボケて同じこと繰り返しても
自分の片割れの確かな存在を確認することは

毎日、生き物として心臓が動いているかどうかではなく
人間として引き続き生きてるかどうかを
確認している行為やと俺は思うよ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄より

読み終えた私は

おとうさん・おかあさん!と心の中で

叫びました。

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